各種業界や会社への提言 エンパワーメント実行録

【2020年】会社が考えるべき社員満足対策とは?(Ⅰ)

スポンサーリンク

これからの社員満足を考えるために

どんな職場で働いている人達であっても、そこで働く労働者(正社員・パート社員・アルバイト等)には仕事上の欲求という物が存在します。少ない人数で働いている飲食店や中小企業の事業所では、オーナーや社長などの経営者の性格や気分によって耳の傾け方が大きく変わってしまう事が珍しくなく社員満足に対応していないと受け取られやすいリスクがあります。

大きな企業の場合は、個々の労働者の欲求に耳を傾ける事を最初からあきらめている場合が多く、人材確保面やES(社員満足)への取り組みとして、アンケートや調査を通して集計された傾向や課題に対応する事によって「耳を傾けている」風に見せていますが、多様化する社員特性による様々な欲求には対応できていないのが実態です。

一方で、現代はVUCA(※)の時代と言われるように、予測不能な事態が次々に発生し、その都度的確な対応をしていかなければ、業績の大幅な悪化や経営危機に瀕する事は珍しくありません。そのために、社員一人一人が経営感覚を持って、責任を自律的に遂行していくエンパワーメント型の組織設計が必要であると言われています。

このエンパワーメント化の特徴は「金太郎あめ型(=みな同じ特性)」の育成を行わずに、現在個々の社員が持っている個別の特性をチームという集団の中で活かし合う事でシナジー効果を期待する物のため、社員満足と言う視点では、集計された傾向という物ではなく、個々の社員毎に対応が必要となってきます。

(※)VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉

さて本章では、「これからの職場に必要な社員満足とは?」にスポットを当てていきますが、自分の仕事に満足するという事は、その前提である「仕事に対する欲求」に関してを見ていく必要があります。この欲求を分解して考える際に良く使われる「マズローの5段階欲求」を使い、VUCA時代に必要とされる「エンパワーメント化された組織のために」という要素を側面的に踏まえながら会社はどうすべきなのか?について考えていきます。

マズローの5段階欲求とは

このマズローの法則とは、人間の欲求はビラミッド型に5段階の欲求で構成されており、下位の欲求が満たされていく事で上位の欲求が段階的表れていくと言う物です。

例えば最も低位にある「生理的欲求」をわかりやすく言えば、「食べる」事です。食料が無い中で、家が欲しいなどの安全の欲求は発生しません。

同様に、家や周辺環境などの「安全の欲求」が確保されると、自分自身が何らかの集団(会社・学校・グループなど)に属したり、会話や相談が出来る相手を見つけたいとする「社会的欲求」が生まれてきます。

さらに「社会的欲求」が満たれてくると、その中で自分自身の存在感を認めてほしいという「承認欲求」が生まれ、さらに自分自身を高めていきたいと言う「自己実現欲求」に昇華していきます。

エンパワーメントとは

VUCAの時代ともいわれる予測不能な現在の環境は、会社や個人が今まで蓄積してきた体験による業務運営だけでは、解決できない難問が次々に訪れてしまいます。

このような環境変化の激しい時代に、継続的に利益を捻出していくためには、一部の経営層や管理職が集中して権限をもち判断をしていくのではなく、社員全員が必要な情報と権限・責任を持って事業を運営・課題を解決していく事が大変重要です。

この考え方に基づいた組織設計をエンパワーメント化と言い、書籍の中では「エンパワーメントとは、自律した社員が自らの力で仕事を進めていける環境を作ろうとする取り組みです。」(「社員の力で最高のチームをつくる<新版>1分間エンパワーメント」ケン・ブランチャード著から引用)と記載されています。

エンパワーメント化をするために必要な3つの要素は、

ポイント

①社員一人一人が責任を持って自律的な行動をするために必要な情報を共有している事

②社員一人一人が自分が進むべき方向とやってはいけない境界線を理解している事

③自分の持つ特性を活かした役割を自律的に発揮できるチームマネジメントが出来ている事 

となるため、昭和時代から一般的であった、上位組織や上司からの命令に従って行動の実現を図っていく業務スタイルでの社員欲求とは違いが発生してくることになります。

生理的欲求

マズローピラミッドの最下段にある「生理的欲求」は、人間が生きていくために必要な欲求を指しています。具体的には飲食に対する欲求、睡眠に対する欲求などが該当します。仕事上の欲求に読み替えれば、食べるために必要な賃金が欲しいとする欲求になります。

日本は諸外国に比べて生活困窮者の割合が少ないと言われていますので、生理的欲求を課題に持つ労働者は少ないと思いがちですが、新型コロナ発生以前でも、生活困窮者や福祉施設に食料等を支援するフードバンクは全国各都道府県で活動を行っていて、年間4000トンもの取り扱いを行っているのです。

これからの時代に経営者が考える事

2008年に起こったリーマンショック、2011年の東日本大震災、今年の新型コロナなど、経済に大きな影響をもたらす出来事は今後も発生すると考えるべきです。その際の事業経営の仕方がその後の会社の価値に直結する事になると共に、すでに会社は、単に会社の利益のみを追求するのではなく、社会の中で一定の役割を果たしていく事(SDG'sの考え方ように)も強く求められていきます。

いざと言う時に、社員の解雇や賃金不払い、大幅な賃金カットなどの社員の「生理的欲求」にさえも影響を与える企業体質にしておくことは、経営者として失格であると考えるべき時代に来ています。

これからのエンパワーメント化組織が不確実性の時代に必要な組織設計で、社員一人一人の自律的な責任と行動の成果を企業業績として求めるのであれば、危機発生時のプラン(BCP)の中に社員の必要賃金の支払い余力も計画しておくことを願います。

安全の欲求

生理的欲求が満たされたときに現れるのが、安全の欲求です。これは、身体的・精神的に安全かつ快適に生活が営めることを欲するもので、安全安心な住居や職場であったり、過度な心理的プレッシャーを感じない事、安定した家庭内経済などが該当するものです。

これからの時代に経営者が考える事

日本の企業は社員の「生理的欲求」に対して、困窮しないレベルでの賃金保障をしてきた事は事実です。しかしこれは予測する事の出来る事業環境下でのもので、今後の事業運営では未曾有の事態への準備も必要です。マズローの5段階欲求の内、「生理的欲求」と「安全の欲求」までは、社員が仕事を行う上で最低限確保しなければならないものです。

また、平時の時であっても自宅でのリモート業務が一般化するのであれば、物的なシステム環境の付与のみに留まらずに、個々の社員の自宅での生活環境に合わせた環境・経済的支援にまで考えを踏み込むべきです。

一方、精神的な安心安全と言う観点では、エンパワーメント化のように、個々の持つ特性を活かして事業を行うとすれば、同一業務に関しては個々の社員に掛かる精神的負担に差がある事を認める事となります。したがって精神的負担に差がある事は、同時に業務に対してのモチベーションや満足感にも差が出る事になるため、職場のリーダー達はマネジメント上に必要なスキルをアップさせる必要に迫られます。

以上から、これからの時代に必要な「安全の欲求」に対しては、

①BCPプラン(災害時の事業継続計画)のような計画の中には、社員の「生理的欲求」対策に留まらず、「安全の欲求」まで踏み込んだ対策を考えておく事。

②社員教育の方向性として、同一労働や同一職種の画一的な教育からの脱却が必要。(職種・職掌)×(ヒューマンタイプやキャリアプラン)などの固定的要素と人的特性要素を組み合わせた研修などの教育方針を考える必要があります。

「これから会社が考えるべき社員満足対策とは?(Ⅱ)」へつづく

これから会社が考えるべき社員満足対策とは?(Ⅱ)へ

スポンサーリンク

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

近藤 章功

組織変革・人財育成を考える次世代リーダーを目指す方向けのサイトです。 経歴は、2019年で企業勤務を退社し、企業・組織のコンサルタントと共に研修会社と契約し研修講師を実施中。専門分野は人財育成・組織強化対策中心に幅広く対応。 コンサルティング・研修・講演ご希望の方は、以下まで anngel01020909.ivia@gmail.com

-各種業界や会社への提言, エンパワーメント実行録
-, , ,

© 2025 エンジェルリーダー(次世代リーダー研究会) Powered by AFFINGER5