これまでの振り返りと全体像
ここまで、導入章、第1章、第2章と3回に渡って、これから営業に必要なスキルについて記載してきましたが、考え方と具体的スキルの内容説明は本章で最終です。
ここまでの振り返りと全体像を再度確認していきます。
<図1>
まずは全体像です。<図1>
環境変化による消費者ニーズは、想像以上に速いスピードで変化しており、かつデジタル化の進化による情報氾濫は、消費者自身がニーズに対する回答を容易に取得できるため、営業がその価値を発揮できる領域は縮小され、営業の存在価値を維持するためには自分自身を変化させなければならない状況となっています。
これを「プロダクト営業➡ソリューション営業」という、容易に見える特性やニーズに対して説明や提案する形から、相手が持っている深層心理に訴えかけ、ニーズを掘り起こして顕在化させていく「クリエイティブ営業」への脱皮が求められている、という形で記載してきました。
次に「クリエイティブ営業」へ進化するために必要なスキルについてです。ここでのポイントは「クリエイティブ営業」に進化するために必要なスキルは、単独で存在するのではなく、今まで必要とされてきた「プロダクト営業」や「ソリューション営業」で必要だったスキルをベースとして持ちながら、加えていくべきスキルがある・・という物でした。その全体像が以下の通りです。
<図2>
前前章の第1章では、どんなタイプの営業でも必要な、ベースとなるスキルについて記載しました。
前章の第2章では、顕在化しているニーズの原因となっている本質まで考えていく「深堀思考力」と顕在化した課題を仮説化した提案をしていく「仮説想像力」についてを記載しました。
さて本章では、実際の対話の中で必要な3つのスキルと、自分自身のコントロールと周囲のメンバー全員でシナジーを発揮していくマネジメント方法についてを記載していきます。
相手の心に寄り添う対話力とは?
ここでの対話力とは、相手が表層的に示している顕在ニーズに対するものでは無く、前章の考える力の中で示した「深層思考力」と「仮説想像力」を発揮するために必要なスキルという観点です。まずは下記の図3をご覧ください。
<図3>
消費者等の相手が持つ潜在的な心に寄り添うためには、
①顕在化しているニーズにまずは共感する事。
②原因となっている背景や悩み事を質問にて明らかにしていくと共に、その感情や境遇に共感する事。
③さらに本質的な課題を明らかにし、仮説を想像出来る質問を繰り返し、同時に本質的な課題に対して共感する事。
④そして、想像できる課題を仮説にして、相手が共感できる説明方法によって解決に向かう。
というプロセスを踏んでいきます。
このように、必要なスキルとしては、「質問力」「説明力」「共感力」の3要素になりますが、特に「質問力」は、
ポイント
その目的を相手の心に寄り添いながら、相手が潜在的に持っている課題をニーズとして顕在化させ、仮説化していくと言う点にあります。
前章の「考える力」に必要なスキルと、今回の「対話力」に必要なスキルを単純イメージ化すると以下の図4のようになります。
<図4>
このように、「深堀思考力」とそのための「質問力」は一対の関係であり、「仮説想像力」と「説明力」も一対の関係にあります。また「共感力」については、相手に寄り添った対話には必須なスキルとなり、全てのプロセスの中で発揮される事が求められるものです。
この「対話力」スキルの習得には、繰り返しのロールプレイングが最も効果的です。この相手の深層心理と寄り添う対話スキルを取得することが出来れば、営業としての高い成果が発揮される可能性は飛躍的に高まると同時に、営業以外の人財にとってもこのスキルがある事で無駄のない効率的な業務運営が可能になるはずです。
実際のロールプレイングの訓練方法については、別章で記載する事とします。
チームの力を使ってスキルを上げよう!
最後にマネジメントに関わるスキルについて記載しますが、下記の図5をご覧ください。
<図5>
社会や消費者、または商談相手など、仕事をする対象の環境変化が著しく変化していく現代では、「クリエイティブ営業」に限らず業務の設計自体を個人単位にするのではなく、チームとして考えて人財のシナジーを発揮させる方が、全体成果へ直結する近道と言えます。
マネジメントスキルについても同様で、メンバー個々に対して業務設計やKPI(行動指標)を設定し、個々の業績の和をチームの成果とするのではなく、チームとして目的とKGI(最終成果)を設定して、チームに所属する個々のメンバーが持っている特性を最大活用する中で、シナジーを発揮していくチームマネジメントを推進すべきです。
さて、営業現場におけるチームマネジメントは? と考えると、全員が同じ行動をするのではなく、メンバー各自が得意とする分野でスキルを発揮する事から考えていきます。したがって、業務の「平準化」とか「平等」とか「ランキング」と言う概念から卒業します。
ただし、KGI(最終成果)は上司や上位組織とコミットする必要がある事から、全員がやりたいことのみやって、KGIが達成できない場合の行動も自分たちで決定していく事になります。
チームマネジメントについては、他のコラムで記事を投稿していますので、以下よりご覧ください。
また、チームマネジメントは誰かに仕事の仕方を指示されるのではなく、自分たちのチームで決定していく事になるため、会議の運営方法が大きな成否のカギを握ります。チームマネジメントでの会議運営については、以下の記事をご覧ください。
以上、マネジメントスキルに関して「チームマネジメント」部分にスポットを当てて記載してきましたが、誤解して頂きたくないのは、
注意ポイント
誰かに指示された場合も、チームで決定した場合も、自分の仕事は自律してマネジメントが必要。つまりチームマネジメントはセルフマネジメントが完成している事が前提となる。
という事です。
以上、今回で「これから営業に必要なスキル」として、導入章から第3章までの4部作で記載してきました。どれも今までの業務が一定程度完成している状態にアドオンの形で高いスキルを求められているように感じたと思いますが、現状を更に良くしたいと考えているリーダーやメンバーの方々は、理想的なゴールイメージをしっかり持つことからスタートすべきです。したがってその観点でお手伝いできる内容を記載してきました。
そして、次に今の現状に正直に向き合って、ゴールとのギャップを焦らずにタイムスケジュール化して解決して行って頂きたいと思います。組織や人の業務スタイルを変革する事は非常に時間と労力が掛かります。それはたぶん年単位の時間が必要であると思います。
しかし、取り組みをスタートさせなければ、何も変化は起きてきませんし、躊躇していればその期間だけが先延ばしになる無駄な期間になっていきます。ぜひ皆さんのチャレンジを期待しています。