0. この章を読んで頂きたい方々
◆自分の部下には落ちこぼれを絶対に作らないと考えている方
◆部下を育成するのが上司の仕事だと考えている方
◆会議の時は、理解力の低い部下に焦点を当てて話している方
◆優秀な部下は勝手に育つので、何もしなくて良いと思っている方。
1.落ちこぼれを作らない・・は危険
私は、一般職からマネジメント職になるための任用面接官を数百人やってきました。
その中で必ず質問者が投げかける質問に、
「自分が管理職になったら、どんなチームにしたいですか?」・・・があります。
この質問に対して、よく出る回答として
「一人の落ちこぼれも無いチームを作りたい」と答える人が良くいます。
一見、素晴らしい考え方のように見えますが、この考え方には条件が付きます。
その条件とは、全員が同一環境や制限の中で、同じ目標に対して仕事を行っていて、一人一人が多く仕事をすれば、質には関係なく成果が出ていくような場合に限る・・と言う物です。
残念ながらこの条件は、現在のいつどこで環境変化が起き、お客様の行動が変化するか判らない不確実性の高い時代には、中々フィットしない環境です。
注意ポイント
もし、貴方が現代の環境下においても、理解力や行動力のレベルの低い部下に視点をあてて育成の時間を割いていたとするなら、チームとしての成果最大化は決して望めないはずです。
2.2-6-2の法則は不変
2-6-2の法則と言うものがあります。
人間の集団の中では、非常にスキル(マインド)等が高い人間は2割しかおらず、残り8割の中に非常にスキル(マインド)の低い2割の人間が存在すると言うもので、残り6割がその間に存在していると言うものです。(結果的に2:6:2の割合)
この理論は私の経験の中では、ほぼ当たっていると思います。
さて、この法則が「落ちこぼれ」と何が関係しているのか?ですが、
「一人の落ちこぼれも無いチーム」にするためには、タスク毎にスキルの低い2割のメンバーに育成の時間を掛けることになります。
その結果、うまく育成が成功してもその中で、また新たな2-6-2の法則が発生しており、この繰り返しが永遠に続いていきます。
つまり、人間の分布というものは集団の中では不変であるという事です。
別の言い方で「ミツバチ理論」という物があります。
これは、働き者のミツバチの中にも、花の蜜を取りにいかない、グータラミツバチが必ずいるそうです。
そのミツバチを巣の中から排除してみると、今まで働いていたミツバチの中から、また同じ割合のグータラミツバチが出来てしまうそうです。
このように、
注意ポイント
落ちこぼれを作らないために、下位2割の育成に時間を掛けることは、マネジメント手法としては効率的な仕事の進め方とは言えません。
ではどうすれば良いのか・・ですが、
私は、人間の本質的な危機回避深層心理にかけた手法をお勧めします。
人間には「嫌われたくない」「いじめられたくない」「お荷物にはなりたくない」という危機回避心理を全員が持っています。
しかも、会社においてその対象は上司よりも、同僚から思われたくないと思っている物です。したがってこの心理をマネジメントすれば良いのです。
具体的には、
ポイント
・上位2割の部下にスポットを当てた、マネジメントを行い、下位の部下サポートは同僚の部下同志に任せる。
・下位2割の部下が得意なTaskを業務として構成し、部下自身にリーダー役まで任せる。
これは、どれをとっても、リーダー自身が下位の部下に直接的に育成はしていませんが、私の経験では、この方が確実に改善していきます。
3.人財育成によって業績向上にブレーキをかけてはいけない
リーダーにとっての人財育成と業績向上は、やり方を間違えると二律背反の関係性を持つために、頑張っているのに業績が向上しないという不毛な苦労を生みます。
このような不毛な苦労をしないためにする人財育成は、上位2割の部下をいかに伸ばすか?にターゲットを当てて、活動戦略や会議運営を含む組織運営をしてみたらいかがでしょう。
組織の成長スピードは、足元業績とポテンシャルの組み合わせです。
上位2割の部下が持つノウハウ量は、横展開が出来れば組織のポテンシャルになります。
したがって、リーダーが行う役割は、
ポイント
上位2割の部下をいかに伸ばし、横展開できる環境を作るか?に焦点をあてるべきです。
4.リーダーがやるべき部下育成の手法とは
上記に記載してきたことでお判りだと思いますが、リーダーは部下に対して直接的な教育をしていません。
部下自身が成長するための環境をリーダーが整える事なのです。