社員自律化(エンパワーメント化)のキーパーソンはミドルマネジメント
~第1章~
絶対必須:中間管理職層(中間リーダー層)の意識改革
環境変化に強い組織を作ろうとすれば、消費者との接点に近い第一線等(営業社員・商品企画社員等)が強い対応力と責任感を持つことが重要です。
デジタル化の進展による情報量の過多は、消費者のニーズを短期間で変化させるには十分な影響力を持っていますし、ネットアンケートや口コミ情報は、消費者の潜在ニーズを探ったり、消費者同士の共感によるに潜在ニーズの顕在化を起こす原因になっています。
したがって、リーダーの過去における成功体験が現代に合致しない可能性も高く、会社が保持しているマーケティングの統計データ等も過去の産物であるからゆえ、役に立たないばかりか間違った戦略や行動の原因となってしまう場合さえあります。
だからこそ、消費者に最も近い場所(組織・人)が、対応力と責任感を持った行動が必要になってくるのです。
まさしくその形が、エンパワーメント化になります。
エンパワーメント化を図る主人公が、マネジメントでは無く、社員の一人一人であるが故に、最初から育成の対象を一般社員にしてしまいがちですが、もしそれを行ったら、その時点で、エンパワーメント化は挫折の道をたどる事が決定したと言っていいでしょう。
常識的に考えてみて、自律的組織運営やエンパワーメント化されていない職場では、「上司が仕事を指示して、部下はしっかり実行する」という図式に業務の設計そのものがなっているため、一般社員が育成の教育を仮に受けても、日常業務では指示・命令⇒履行の図式で業務が運営されていれば、教育を活かすシーンは永久に訪れないのです。
ポイント
したがって、エンパワーメント化に限らず、組織改革を行う場合は、必ず一般社員に日常的に接している中間管理職が最も重要なキーパーソンになるのです。
それでは、一般社員はいつから育成を開始するのか?という問題ですが、これは中間管理職を意識改革していくプロセスの中で、部下の社員達は自然に変革を感じていくはずです。
エンパワーメント化を実際にやってみた私のイメージでは、中間管理職の意識改革だけで1年は必要です。
理由は、変革への必要性という意識は持っているが、過去の成功体験が強い事と、経験の中に持つ過去の尊敬すべき上司等の姿からの脱却に時間がかかるため。
そのあとに、管理職では無いが組織のリーダー格の人間に対して育成を開始し、全社員対象の具体的育成開始は2年後程度であると考えるべきだと感じています。
注意ポイント
絶対にやっていけない事は、中間管理職が意識改革できていないのに、全社員対象に研修を開始したり、制度や組織の形式を変えてしまう、本末転倒な行為です。
これをやってしまう場合が非常に多いと感じますが、この場合に中間管理職は、組織のデスリーダーになって組織崩壊を招くリスクを大きく孕むことになります。。
VUCAの時代に必要なマネジメント要素
エンパワーメント化に限らず、不確実性の高い現代において必要なマネジメントスキルは、過去との違いがあります。
では、どんな要素が必要なのか・・について以下の図をご覧ください。
これは、VUCAの時代に必要なリーダー像を表したものです。
大きな要素としては、「人間力」「経験によるスキル」「変化に対応したスキル」「チームマネジメント」の4要素であり、下段2つの「人間力」「経験によるスキル」は今までの人生・経験・学習・見分等によって培われてきた能力であると思ってください。
次に上段2つはエンパワーメント化を行う際に必須となる中間管理職の能力であると理解してください。
また、図の右側に記載してある事は、必要なマネジメント能力は上段へ進めば進むほど、その組織や所属する部下達は「変化への対応力」が高まり、「成果の継続性」も強くなります。結果として、「人財の成長度」も高まるという事です。
一方、エンパワーメント化は、今後記載予定の足元成果との両立をうまく行わないと、組織や人財の成長過程において、足元成果が停滞する可能性があります。
さらに、社員個々が業務を計画・判断していく事から、エンパワーメント化の第二の鍵になる「境界線を引く」をしっかり行わないと、様々な企業リスクにさらされる可能性が高まります。
ただしこのネガティブ要素は、事前に「こうなる可能性がある」と知っておけば、ほとんどのリスクは回避または極小化する事が可能です。