コロナ影響で、多くの職場で通常の業務が停滞しているはずですが、こんな時期だからこそ、経済が回復した際にどのような行動を取るかを考える機会にしたい所です。
今回は、「もし、自動車販売会社のリーダーだったら」として記載していきます。
1. 小さな変革
事業停滞による経営の悪化は、仮にある程度体力のある会社であっても、ステークホルダーがいる以上、一刻も早く経営を好転させたいと考える事が普通です。
そこで、まずは小さな変革について考えてみましょう。
参考に、業界は別ですが、経営悪化した飲食店の改善ポイントという物を見てみます。
① 料理のメニューを整理する
② 接客サービスを見直す
③ 店舗内に清潔感を出す
④ SNSでの訴求を強化する
以上ですが、これを自動車販売会社の立場になって考えてみます。
① 料理のメニューを整理する
これは、自動車販売会社では取り扱いの車種の見直しという事になりますが、さすがにメーカー跨ぎが出来ない業界では現実味がありませんので、注力する車種や販売方法という点に置き換えます。
具体的には、今回の環境でネガティブ影響とポジティブ影響を受けた人を推測で棚卸しします。
例えばネガティブサイドでは、
①収入が減少した業種に勤務しているが、車の使用頻度が高いお客様
②コロナ期間中に乗り換えの可能性のあったお客様
一方ポジティブサイドでは、
①この時期に収入が増加したお客様
②今までは交通事情が良いために車の購入を考えなかったお客様。
これは職場でブレストをすればもっと多くの意見が出ると思います。
このブレストから自動車販売会社がすべきメニュー改善は、行動すべき優先順位を明確化して、選択と集中をする事です。
注意ポイント
経営が厳しい時ほど全網羅的な販促や業務計画は、業績に寄与しにくく、かつ振り返りが出来ないため、壁にぶつかる事になります。
これに、想定客数と契約成立時の営業利益単価を掛け合わせて、業務の優先順位を作り、攻略計画を作っていきます。
実行時の注意点は、全てに対して人的パワーの分散をするのではなく、可能な限り優先順位の高い所から人的資産の集中化を図るべきです。
② 接客サービスを見直す。③ 店舗内に清潔感を出す。
緊急事態宣言解除後においても、ディーラーの店舗に来るお客様は、対人接客に対しての心理的危機感は当面払拭されない事と思われます。
したがって、
マスク着用のみならず、抗菌系素材のマットをテーブルに使用したり、飲み物は飲み捨て出来る飲み物に変えるなどの考慮が必要ですし、咳が出ている社員は、仮にコロナに関係なくても、接客には対応させないなどの注意が必要です。
また、情緒的サービスとして、今回の件で心に傷を負っている方も少なくないと思われますので、痛みに寄り添う言葉や傾聴の姿勢が重要であると思いますので接客する社員には、ロールプライングなどの訓練が必要です。
④SNSでの訴求を強化する
ホームページ(チラシも同様)等のSNS手段は店舗への来店客数が見込めない中では、最も重要なコミュニケーション手段です。
したがって、情報更新の頻度を上げる事と、双方向コミュニケーションになる手段を構築すべきです。
ポイント
情報内容は、プロダクト訴求ではなくソリューション訴求へシフトして下さい。別の言い方をすれば「モノ」を売るのではなく「コト」を売るための情報発信です。
この「コト」を売るコミュニケーションは、以前から言われ続けていますが、特に日本の企業は本当に出来ていないと感じます。
双方向コミュニケーションとしては、今回のコロナで一躍一般化したリモートを活用して、リモート対応チームによる接客を行うとか、販売会社として「問い合わせ窓口」を積極的に開示して、スピード速く対応する必要があります。
ホームページだけではなく、ブログやTwitter等によって、社員が車に関する「コト」をコミュニケーションする事も必要であると思います。
当然ですが、戦略の変更は人的インフラの配分変更と一対です。間違っても、「そこに割ける人が居ない・・」を理由にすることの無いようにしてください。
2. 大きな変革
今、就学期間を9月開始にする案が議論されていますが、そのように混乱している時期だからできる大改革もあると思います。これも自動車販売会社で考えていきます。
①トップリーダー自身がビジョンを再設定して、全社を牽引する。
稀ににですが、トップリーダー(自動車販売会社の場合は社長)がお飾りのように求心力も牽引力も無かったり、メーカー出身の窓際族のような方が居たりしますが、はっきり言って心当たりのある方は、所属社員を不幸にしますので勇退をして頂くべきです。
また、ビジョンや戦略方針などを自分で描けない方は、同様に勇退いただくか、外部コンサルを導入してください。
最も悪いのは、自分が過去に持っている成功体験を、時代錯誤甚だしく今も高らかに説教しているトップリーダーです。
私自身も別業界で同様の立場をしていましたが、
ポイント
環境変化の激しい時代には、自分の過去経験や研修や書籍等の外部知見は役に立ちません。
環境変化に対して正直に向き合う勇気が必要なのです。
②組織を見直す
販売会社の場合に良く出会うシーンですが、営業とサービス社員が、まるで別会社の人同志のように存在している事です。
これは何故なのか、いまだに不思議です。
百歩譲って、サービスの社員が一切の接客をしないのであれば許せます。
また、営業の社員が自分で整備結果の案内などを行っているのなら許せますが、これが別々に同一のお客様に対峙している事が不思議です。
お客様を中心に据えて、「モノ」を売るのではなく「コト」を売って行くのであるならば、即座に改善すべきです。
例えば私は学生時代から社会人までの30年間ソフトテニスと言うスポーツをやっていましたが、ソフトテニスでは、審判員資格を持たないプレイヤーは公式戦には出場できないため、全員が資格を持っています。
ディーラーの営業社員も同様に最低限の整備士資格を保持するべきですし、サービスの方には、対人コミュニケーションスキルの研修を必須として可能なら資格化すべきであると思います。
その上で2つの組織の相乗効果を狙いましょう。
例えば、営業がお客様の家に訪問したら、どのメーカー車であっても無料点検と簡易サービスを実施するとか、サービス部門から、サービス関連の販促企画を奨励して褒賞するとかをしてはいかがでしょう。
④ エンパワーメント化
この部分は私の本業なのですが、お客様ニーズの変化スピードが激しい現代、優秀なマーケティング部門を自前で持っていない場合は、一人一人の社員の力にゆだねるのが正しい判断なのですが、やり方が間違っている場合が多い。
一番多いのが、全社員同一のスキルを付与する研修や評価システムを行っている事。
次に多いのが、一般社員に対しての研修機会を最も多く設定している事です。
これらは過去の「作れば売れる時代」の産物か、管理職が逃げているか、研修会社に騙されているかです。
社員一人一人には持って生まれた能力が必ずあります。
それを見つけて業績に活かすことが、変化の激しい環境下には最も重要です。
また、最も育成し続けなければならない対象は、ミドルリーダー層(トップリーダーが優秀である事が前提)です。
ここを間違わないように変革をお考え下さい。