会社で働いている時に、こんな悩みを持っている方はいないでしょうか?
「自分は会社にとって必要な人間なんだろうか?」「自分を認めさせるためにはどうしたら良いのか?」「そろそろ自分の価値を発揮しないとやばい年ごろになってきたけどどうすればいいんだろう?」
私は日頃研修の講師をやっていますが、受講生の話を聞く限り、このような悩みを持っている方は少なくないようです。
このような質問を受けた時には、「自分の個性・特性を活かせる場所を見つけるのが近道です」とお答えしていますが、今回は、マーケティングの基本原則になぞらえて、会社内での自分の立ち位置確立を考えてみる事にしましたので、悩み解消とマーケティングの基礎を覚える事を一緒にやっちゃいましょう。
1.マーケティングプロセスを使ってみる意味
マーケティングプロセスを使って、社内での自分の立ち位置を考えてみる意味は、マーケティングも自分の立ち位置確立も、会社と社会が求めている事を整理して、自分(自社の商品)の長所を発揮することで、最大の価値を効率的に発揮すると言う点では一緒だからです。
さて、マーケティングプロセスには、いくつかの手法がりますが、「売れるマーケティング」としてマーケティング手順を5つのステップで表した「R-STP-MM-I-C」手法を使って考えてみる事にしましょう。
2.「R-STP-MM-I-C」手法とは?
「R-STP-MM-I-C」手法と言うと、とても難しいと思うかもしれませんが、今回は深く考えずに表層的に見ていきましょう。まず、次の絵をご覧ください。
マーケティングプロセスとは、「調査」⇒「戦略」⇒「戦術」⇒「実行」⇒「管理」の5つのステップで表現ができます。
調査とは、
自分の立ち位置を考えるにあたって、自分の会社や自分のセクションの置かれている環境、そして自分自身の強み・弱みを体系的に整理してみましょう。
マーケティング手法の中では、「調査」といって、大きな観点で言うと「マクロ分析」と「ミクロ分析」に分類されます。
マクロ分析の代表的な分析手法として「PEST分析」というものがあり、「政治的要因(Political)」「経済的要因(Economic)」「社会的要因(Social)」「技術的要因(Technological)」の頭文字をとっている手法です。これは、自社が規制緩和や政治、景気変動や為替変動、人口動態や技術変化などの外部の大きな問題によって業績を左右される事があるか?と言う点を考えておくというものです。
ミクロ分析の代表的な分析手法として「3C分析」というものがあり、「顧客(Customer)」「競合(competitor)」そして「自社(Company)」という観点で業績に影響を及ぼす要因を考えるというものです。
このPEST分析と3C分析によって抽出された変動要因を、ポジティブ要素とネガティブ要素に分けてポジティブ要素を「機会」と呼び、ネガティブ要素を「脅威」と呼んで分類しておきます。
次に、自社の強みと弱みを抽出して、変動要因で分類した「機会」と「脅威」にクロスさせてみます。これをSWOT分析と言います。
自分をマーケティングするポイント
自分自身の立ち位置を分析する際には、「内部環境」の強み・弱みを自社ではなく、自分に置き換えてみましょう。また外部環境についてはこのマクロ的な記載でも可能ですが、より身近に整理するために、今自分がいるセクション(職場・部等)にとっての機会と脅威で考えてみると良いでしょう。
その結果前記のSWOT分析の図にあるように「積極攻勢に出る部分」「弱点克服する部分」「差別化を図る部分」「防衛・撤退」を図る部分が見えてくると思います。
戦略とは
戦略で整理した自分自身の「積極攻勢に出る部分」や「差別化」は、どんな状況で、またどんな相手に対して発揮すれば良いのか考えましょう。
マーケティング手法の中では「戦略」と言って、これも「調査」同様様々なものがある中から今回は「STP戦略」を使って考えてみましょう。
ここのSTPとは、「市場を細分化する(Segmentation)」「ターゲットとなる顧客層を絞る(Targeting)」「NO.1の位置づけを獲得する(Positioning)」の頭文字をとって「STP戦略」と呼びます。
まず「市場を細分化」するためには、何らかの変数を決めて細分化する必要があります。この細分化に良く使用される変数には以下のようなものがあります。
②ジオグラフィック(地理的変数)⇒国、行政区、人口、気象、文化等の属性を使用
③サイコグラフィック(心理的変数)⇒顧客の価値観、購買動機、性格、ライフスタイル等の属性を使用
④ビヘイビアル(行動変数)⇒商品、サービスの使用頻度、利用目的等の属性を使用
これらを使用して自分の扱っている分野に関係する市場を細分化してみる事をセグメンテーションといいます。
ここから伸びてる市場やニーズの拡大している市場などの発見や商品未配置市場、競合が進出していない市場などを見つけて、攻略場所を決めていく事をターゲティングといいます。
したがって、セグメンテーションとターゲティングは常に一対である物なのです。
このセグメンテーションとターゲティングが実行されてきた背景には、顧客ニーズの多様化があります。つまり、一つの商品やサービスでは満足していただく顧客の割合が小さくなってきたため、勝つ場所を決める戦略が浸透してきた訳です。
自分をマーケティングするポイント
このセグメンテーションとターゲティングを会社の中の自分の立ち位置を見つける分析に使用する前提に、直前に記載した顧客(立ち位置分析の場合は上司・もしくは会社)のニーズの多様化が無ければなりません。
つまり、例えば「社員は指示された事を馬車馬のように実行すれば良いだけである」というような戦後から高度成長経済初期までの考え方をもつ経営者の下では、この時点で分析の意味を持たなくなります。
しかし、現代は顧客のニーズの多様化同様に社員の多様化(ダイバーシティー)が叫ばれている状況下ですので、この分析には意味を持つ事になります。
自己分析を行うための変数としては、サイコグラフィックの会社や上司が部下に求めるものや、デモグラフィックの自分の年齢に求める事などを使用すると分類しやすいかもしれません。
会社、上司が自分を求めている市場を特定出来たら、次に行うのはポジショニングです。
ターゲットとしたニーズ(例えば新規商品開発部門や大口営業担当部門など)の中で、自分がNo.1として見られる事の出来る場所(例えば、WEBプログラミングスキル、折衝力、統計分析スキルなど)を見つける必要があります。
ポシジョニングのNo.1を意識する理由は、人間の頭にはNo.1は意識として残るが、No.2以下はあまり残らない特性があるからです。(富士山は高さNo.1の山だが2位は?)
ここまで出来れば、戦術に入ります。
戦術とは
「R-STP-MM-I-C」での戦術とは、マーケティングミックスの事を指します。このマーケティングミックスとは、ネーミングやデザイン、価格や販売方法、販促手段などの様々な要素を組み合わせる事です。マーケティングミックスのポイントは、統一感を出す事です。例えば高級志向として販売した商品のデザインが安っぽかったり、ディスカウントストアで販売されているという事が無いように一貫した主張を持つ事が大切です。
マーケティングミックスの手法として代表的なものが「製品のための4P」と「顧客のための4C」があります。
まずは、4Pと4Cを対比して記載した図解が次のようなものになりますが、顧客側の視点である4Cの各項目について簡単に説明します。
ここまでくれば後はスケジュールを立てて、効率的に実行していくステージになります。
自分をマーケティングするポイント
4Cを自分の立ち位置を確保するための使用方法は、4Cの顧客を会社もしくは上司、製品を自分に置き換えて考えてみることです。
①Customer Valueとは・・・会社(上司)が、今または将来、必要と思っている社員の要件を持っている自分である事。
②Customer Costとは・・・会社(上司)が、人財育成に掛けられる投資金額、もしくは人財確保までの必要期間。
③Covenienceとは・・・会社(上司)にとって必要な時期に必要な人財を確保できる環境にあるかという事。
④Communicationとは・・・会社(上司)が知りたい、必要と思っている情報を上手く伝えられるかという事。
この中での①と②については、5つのマーケティング手法の内の「調査」~「戦略」までをしっかり作っておかないと考えられないか、もしくは的外れの戦術を実行してしまうと言う致命的なミスに至る可能性がありますので注意してください。
実行と管理とは
ここまでのプロセスが出来れば、これからは実行ステージです。実行ステージと管理ステージについては、マーケティングも自分の立ち位置を作っていく事も同様の考え方で良いと思います。
実行ステージの際に重要なポイントは、
①5W1Hを意識して実行計画を作る事
Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)
②中間チェック方法を明確にしておくことです。
中間チェック時の達成度合いのレベル(マイルストーン)、中間チェック時期(サイクル)
そして管理は、実行計画の実施状況と中間チェック時のマイルストーン達成度合いについて、評価を行います。
注意ポイント
ここでのポイントは、必ず評価を行うことです。
そして、この評価でよくある間違いは、「実行計画が出来たかどうか」を評価して、「当初予定した戦略(目的)が達成されているかどうか」を確認していないと言う状況になる事です。(手段の目的化と言います)
評価は次の戦略立案や実行計画を作るために行うものです。イメージ的には、最終的に目指す姿の何%が現在達成できているかを見ると考えて下さい。
3.ポイントは2点
マーケティングにしても自分の立ち位置を作っていく事にしても、ポイントとなるのは
①最終的になりたい姿(ゴール)
②タイムラインを考慮したマイルストーン(達成度合い)
を明確にして置く事です。そして、この2点に関しては必要に応じて変化させる勇気を持ち続けてください。なぜなら、世の中の環境も消費者のニーズも、会社のトップや上司の考え方も常に変化しており、その変化度合いは大きく、変化のサイクルは短くなっているのが現在の状況だからです。
一度決めた事を変える事は非常に勇気がある事ですが、これが出来る事が求められているのが、現在の会社であり、個々の人財なのです。
4.これから必要とされる人財とは?
最後にこれから必要とされる人財について記載しましょう。
☆個性をアピールできる人財である事。
この個性をアピールできる人財と言う言葉を使うと、全科目平均点の人財ではなく、一部の科目が120点であるような人財なのか?と問われますが、これは半分正解で半分不正解です。なぜなら、全科目が平均点以上をとれるユーティリティープレイヤーは、それこそが個性と言えます。ただし、会社が業務に対して適性を見る時に、ユーティリティープレイヤーは判別しにくかったり、上司からの推薦がしにくいというデメリットがあるため、個性が光っている方が自己実現には近道である可能性が高いと言えます。ただし、一部の科目が120点という個性を持っている社員でも、落第科目があるようでは組織の中ではリスクが多い人財として活用しにくくなります。平均点とまでは言わないまでも落第点がある個性だけは改善する努力をしましょう。
☆変化に対応できる人財である事。
今現在の会社環境や社会環境は、1年後にはどうなっているか判らない時代になってきました。同様に職場環境も、上司からの要望も短いサイクルで変化していく事が容易に想定できます。そんな時に自分価値は不変である・・と言うような固定的な考え方では、一度築いた自分の立場も瞬時に崩壊する可能性が高くなります。したがって自分の取り巻く環境の変化には敏感でいる事と、その都度自分のすべき事を考え、必要な応じて変化させていきましょう。