今なぜ対話スキルが必要なのか?
セールスマンが勝つ相手
さて、冒頭から「勝つ」という言葉を使用していますが、人が実践する営業が勝つ相手とは何でしょう?
”営業が勝つ相手”として想像できるものとしては、「競合企業の営業」「同僚」「与えられた目標」等がありますが、
ポイント
本章の勝つ営業の相手は、「氾濫している情報」に対してです。
一般的に営業は人間が行ってきました、その理由は人間であるからこそ相手が持っているニーズへの対応や、課題への解決策提示などが出来ると思われてきたからです。しかし、現代のデジタル化の情報社会では、どんな人でも自分が持っているニーズへの対応方法や課題の解決策を簡単に検索して取得することが出来るのです。しかもその情報は365日24時間自由な環境で取得が可能です。
本コラムの目的
したがって、人でなければ出来ない営業を見つけて実践していかなければ、営業に人が配置される価値が発揮できません。
本章は「人でなければ出来ない営業の実践訓練」について記載していきます。
これからでも、人でなければ出来ない営業はあるのか?
答えは「YES!」です。前章に記載した「どんな人でも自分が持っているニーズへの対応方法や課題の解決策を簡単に検索して取得することが出来る」のくだりには、大きな前提があります。
人間の特性
人間は顕在化されたニーズや課題に対してしか行動や思考する事が出来ない
したがって、顕在化されていない部分にスポットを当てることが出来れば、人が営業を行う価値が発揮される事になります。そのスポットを当てる部分が潜在意識です。
以下のイメージ図をご覧ください。今まで行われてきた営業スタイルとの違いを説明します。
◆「プロダクト営業」
商品がもつ特性を訴求して売上を向上させていくもので、高度経済成長やバブル期に機能発揮可能。
◆「ソリューション営業」
消費者等のターゲットが持つ顕在化されたニーズや課題に対して解決策を提案するもので、デジタル化が進展するまでは有効な手段。
◆「クリエイティブ営業」
商品のプロダクトや顕在化されたニーズや課題に対しての解決策は、自分自身で容易に取得できるため、人間自身が深層心理に持っているが顕在化されてない本質的な部分に視点を当て、原因や困りごとに対して解決する仮説を立てて提示していく営業スタイルの事。
以上の事から本章で訓練する部分は、人間が深層心理の中で持っている、顕在化されていない課題や悩み、困りごとを抽出して新たなニーズに顕在化させる事で、解決策(ソリューション)を提示していくという対話方式です。
対話力向上ロールプレイング
職場で行うOJTでのロールプレイングは、「恥ずかしい」とか「仲間や上司に凹まされるだけ」という印象を持つ社員は少なくないはずです。この問題の壁を低減させる手段は以下の2点ですので、職場のリーダーは必要に応じて実践してください。
①ロールプレイングをする目的をしっかり事前に伝える。
➡本章の冒頭説明または、本HPの「これからの営業に必要なスキルとは?<第1章~第3章>を引用して、腹落ちするように伝達してください。
②ロープレの評価の半分は必ず相手を褒めるルールを設定
➡ロールプレイング実施者同士や、第三者の同僚や上司であるリーダーは、ロールプレイング後の評価や意見の際に、必ず半分は実施者を褒めるというルールを作る事で、聞き手側のネガティブな障壁が低減されるだけでなく、褒める材料探しのために聞き手側の真剣度も向上するという効果があります。
STEP.1)現状の自分を知るロールプレイング
最初にやるロールプレイングは、現状の対話力をロールプレイングで知るために行います。したがって、時間設定以外の制約を無しにロールプレイングを実施します。
ロープレ設定
【時間設定】一回のロールプレイング5分&他2名からの感想5分=計10分
ローテーション3名実施で総計30分
【実施者設定】3名一組(セールス役、消費者役、時間管理係)
①自社商品(サービス)を相手(消費者役)に購入(使用)してもらうロールプレイング、
他に設定なし
②時間管理役は5分終了合図以外に、相手ニーズの聞き取りから自社商品説明に入るタイミングの時間を控える。
➡何も制約を行わないと、相手が口にした顕在ニーズ(表層的な現象)に対して、長時間自社商材の説明に入る傾向があります。次のSTEP2のために、ニーズ探りの質問時間と提案説明の時間を分ける検証を行ってください。
STEP.2)質問力を図るロールプレイング
次に行うロールプレイングは、現状の質問力を図ってみるものです。内容に制約事項は設定しませんが、質問時間だけを厳格に設定します。
ロープレ設定
【時間設定】一回のロールプレイング5分&他2名からの感想5分=計10分
ローテーション3名実施で総計30分
【実施者設定】3名一組(セールス役、消費者役、時間管理係)
①自社商品(サービス)を相手(消費者役)に購入(使用)してもらうロールプレイング、
②セールス役は開始から3分間は相手への質問のみしかしてはいけない。
③時間管理役は、開始から3分をセールス役に伝達、5分で終了合図実施。
➡ポイントは3分間商品提案に入らずに、ニーズの引き出しをし続けられるかになります。
※STEP.1)STEP.2)両方実施する時間が無い場合は、1st STEP)を省略する事は可能。
STEP.3)対話力向上訓練の目的の再確認
1.訓練の目的を再確認
対話力向上ロールプレイング訓練は、顕在化された相手ニーズや課題を掘り下げて、相手の深層心理に潜む顕在ニーズの原因や本質的課題を顕在化させる事が目的です。イメージ図は以下の通り。
2.基本的対話パターンの型を共有
上記のイメージ図を参考に、基本的な対話パターンを以下の通り確認していきます。
①相手の持つニーズや課題の聞き取りと共感➡この共感はこの先深堀していくための心理的バリア低減のために重要です。
(共感フレーズ例:そうですよね・・〇〇な事が出来たらとても楽しくなりますよね・・)
②顕在ニーズの原因や本質を探るための深堀質問と確認・共感➡この共感もこの先提案するまでの心理的バリア低減目的
(本質探り質問例:それをしたいという事は、何のきっかけでそう思うようになったのですか?)
③本質的な課題や原因を仮説化する
(仮説例:そこに本質的な課題があるのなら、○○すれば顕在化しているニーズと一緒に解決するかもしれない)
④仮説化した内容を本質的なニーズとして顕在化させ、相手に解決策を提案してみる。
(提案例:冒頭に〇〇したいと伺いましたが、もしかすると〇〇する事ができれば、更に良くありませんか?)
この①~④の中で②の潜在的意識を探る質問が難しい部分です。最初のトークで相手から聞いた顕在ニーズに対して、以下のような目線を参考に質問してみましょう。
潜在ニーズ抽出ポイント
◆時間的変化・・・以前もそう考えていたか?いつからそう考えるようになったのか?
◆場所的要因・・・ほかの場所やシーン、またはTPOでも同様に思うか?特定の場所はあるのか?
◆願望元・・・そう思うのは、自分自身だけがそう思うのか、誰かに依頼されているのか、誰かに影響をされたのか?
◆要因分解・・・そう思うのは具体的にどの部分なのか?ほかの部分は思わないのか?なぜその部分だけなのか?
◆身体的影響・・・それを解決できると身体的に良い事は何か、解決できないと身体的にどんな悪影響があるか?
以上の基本的対話パターンを再確認をした後に、再度ロールプレイングに入ります。
STEP.4)クリエイティブ営業実施のためのロールプレイング
3回目以降からは、質問力の型を取得するために繰り返し実施する訓練です。
ロープレ設定
【時間設定】一回のロールプレイング5分&他2名からの感想5分=計10分
ローテーション3名実施で総計30分
※可能であれば、一人最低2回実施する事が望ましい。(その場合はローテ3名実施で総計60分)
【実施者設定】3名一組(セールス役、消費者役、時間管理係)
①自社商品(サービス)を相手(消費者役)に購入(使用)してもらうロールプレイング、
②セールス役は開始から3分間は相手への質問のみしかしてはいけない。
③時間管理役は、開始から3分をセールス役に伝達、5分で終了合図実施。
④感想時間の時には、潜在ニーズ掘り起こしの観点と仮説化から顕在ニーズとして提案する流れに対してコメントを実施してください。(非常に重要なポイント)
総括
・訓練参加したグループで、各自が本日の訓練の感想を述べあう事。
・対話力の型を取得するための今後の行動宣言を作成し共有を行う事。
1日パターン(実質半日実施可能)の訓練はこの内容で終了ですが、この訓練は定期的に実施する事が大変重要です。
理想的には毎週1回程度STEP4のみ日常のOJTで実施していけば、数か月で見違えるほど対話力が向上しているはずです。
ぜひ実践してみてください。