~職場のエンパワーメントやってみた第5章~
部下にとって、迷惑な権限移譲
自律化したチームを作るためや人財の育成をするためには、
「上司が仕事を指示し、部下が実行する」という図式を変えなければなりません。
変えるために絶対必要条件として上司が持つ権限を部下へ委譲する必要があります。
最近は“自律化”という言葉が流行りのように使われますから、リーダーの皆さんも「今まで自分が指示していた事を、ミーティングやプロジェクトなどを通して部下たちに考えさせている」という事を多かれ少なかれやっている事でしょう。
しかし任せたリーダーからは、こんな感じの話をよく聞きます。
「部下たちに任せたのに、楽しそうじゃなく、迷惑そうにしている」
「部下たちで決めた結果だから、不十分だけど我慢してやらせて、後で後悔した」
「部下たちに任せても、結局目新しいアイデアは出なかった」
「部下たちで考える時間が増えて、余計残業が増えた」
「部下から指示してくれた方が楽なので言ってくださいと言われた」
私も多くのリーダーが戦術を部下のメンバーたちに任せているシーンを見ていますが、ほとんどの場合、部下にとっては考える時間が増えた事で、かえって仕事が増え、結果的に「いい迷惑」になっています。
これは、任せた側も任された側も、なぜ今やっている事が必要なのか、これをする事で自分たちに何のメリットがあるのか、どうすれば効率的に課題を解決できるのか等を理解せず、またスキルを持っていないために起きている現象です。
ポイント
エンパワーメント化を進めていくうえで、このチームマネジメントの部分に関しては、単に任せれば良いのではなく、任せる側と任される側双方に訓練が必要になるのです。
デレゲーションとエンパワーメントの違い
ビジネスにおいて、自律的人財育成を語るときに、デレゲーションとエンパワーメントという意味の似ている言葉を使います。
デレゲーションとはまさしく権限移譲を意味していますが、「代表を送る」という意味もある事から、イメージ的には「今後は一切任せる」という時に使います。
一方、エンパワーメントは直訳すれば「パワーを与える」と言う意味ですから、デレゲーションの権限移譲だけでは無く、パワーが発揮できるように支援してあげるという違いがあります。
前節に記載した自律的人財育成をリーダーが行動に移すと、一般的に行う行動としては、まさしく「デレゲーション」に近いはずです。
本来デレゲーションは、一切任せる事が前提のはずですが、何も支援を行わないで「権限移譲」をすれば、リーダーが考えている以上のプランが部下のメンバーから出てくる可能性は低い事から、要請した側のリーダーには、出てきた答えに対しての不満感や、逆に妥協感が出てくることも当然と言えます。
エンパワーメントの原則は、「個々のメンバーの特性を活かすための支援」になりますから、単に任せるのではなく、まず事前に
注意ポイント
①判断やプランニングに必要な情報提供
②進むべき方向性とNG(やってはいけない事)ライン
③今回のタスクにあたってのメンバー毎に期待する役割の伝達
をしっかり全員に伝えておく必要があります。
実際にエンパワーメント化をするために、部下たちに課題を与えて、上記に記載した注意ポイントをしっかり伝えたとしても、最初から期待通りの成果が出てくることは期待できないと思います。
したがってリーダーは、部下のエンパワーメント化の成長度合いに合わせた対応を求められます。
ポイント
STEP1)導入初期・・完全に任せる必要はありません。逆に完全に任せる事は部下達にとってストレスを抱え込むことになるため、リーダーは、プロセスの中で可能な限りサポートの立場で関与してください。
STEP2)導入中期・・部下に課題を任せていく事を繰り返していくうちに、対応できる部下と出来ない部下とに分散していきます。リーダーは、育成プロセスの中での想定内の現象であると大きく構えて、トラブル発生しそうな場合にサポートする程度に我慢してください。また、メンバーの特性に合わせて課題の与え方や役割を可変させていく事も必要です。
STEP3)安定期・・・部下たちのメンバー同士で一定程度の解決が出来るようになったら、リーダーは関与を更に控えてください。この時、場合によっては失敗を多くするリスクがありますが、失敗は今後の糧になるため、あえて容認できる失敗を回避するような行動は控え、その責任は上司である貴方がしっかり取るという宣言をしてあげましょう。
さて次回からエンパワーメントを行う上で必要なスキルにはどんなものがあるかを体験談で説明していきます。