職場のエンパワーメント(自律的組織運営)やってみた第3章
職場のビジョンとは何か?
会社や組織の経営理念として、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」という3つの言葉が使われます。この3つの事を略してMVVなどと呼ぶ事もあります。
この3つの言葉が持つ、本来の定義は
「ミッション」・・・自社や組織の社会的な存在意義や存在価値を示す物
「ビジョン」・・・ミッションを通じて、中長期的に会社や組織が到達する理想の姿
「バリュー」・・・ミッション達成やビジョンの実現をするための価値観や行動指針
以上が3つの定義ですが、今回のテーマは「職場のビジョン」ですので、あまり深く3つの言葉を使い分ける必要な無いと思います。なぜなら、会社組織でステークホルダーを含めた社会的に発信する場合と今回のように職場のメンバーが理解する事が目的の場合では、違いがあって当然だからです。
ポイント
大切な事は、職場の部下たちが「日々の業務を実施するための拠り所となる羅針盤となっている事」です。
それを職場ビジョンと呼んで共有していく事に大きな価値があるのです。
自分にとって近いビジョンを作る事
会社には、ほどんどの場合ビジョン及びミッションは作られていますが、社員一人一人がその内容を記憶して行動している事は残念ながら少ないと思います。
職場によっては、社訓のように毎日声を出して読み上げる所や、職場の壁に掲げられている所もあると思いますが、ほとんどの場合一人一人にとっては遠いメッセージになっているはずです。
また経営者や組織のTOPが、ビジョンや経営理念が浸透しない事を悩んでいる姿を見る事がありますが、ジョン・P・コッターの言葉で以下のようなものがあります。
参考
「組織のトップがかなりの時間を割いて社員にスピーチで説明したつもりだったが、それは年間の社内コミュニケーション全体のわずか0.0005%しか費やしていないのだから当然である」
また、国内で最大手であるコンビニチェーンが毎週行う会議では、全社員向けに冒頭メッセージを会長が実施しますが、内容は同一のものであるという話もあります。
更に言えば、統計的に「思想や理念を部下に伝えて、行動に自然と転嫁できるようになるまでには、同じことを500回は伝える必要がある」と記した研究者もいます。
では、どうすれば浸透できるのかと言えば、「自分たちでとことん・かつ繰り返し議論して作り上げる事」が、時間はかかったとしても最も近道になります。
書籍「社員の力で最高のチームをつくる」の中では、第二の鍵として、「境界線を明確に作る」というフレーズで記載されていますが、このビジョン及びミッションを社員全員が十分理解することを意味し、これが浸透できない事は、社長や役員が会社のビジョンやミッションを知らずに経営している事と同じ意味を持ちます。
私が実際にチャレンジしたエンパワーメント化のプロセスの中では、ここが大変重要なポイントとなりました。
ポイント
なぜならこの部分は、自分たちが進むべき道であり、その時の自分たちの役割を示す部分なので、全社員が自分事として染み込ませる必要があるからです。
したがって、この部分には充分時間を取って議論してもらう必要がありました。
この際の注意点ですが、職場のビジョン作成は部下のメンバー全員でする事が必要ですが、リーダー自身が一旦作成する事は当然必須です。リーダー自身が職場のビジョンを作るために必要な事は、以下の4点であると思います。
ポイント
①将来自分が働いている職場の環境はどのように変わっているか?
②会社の経営計画はどのようになっているか?
③上位組織や、上役のビジョンはどうなっているのか?またその理由は何か?
④自分たち(自分)が将来に向けて果たすべき役割は何か?
その結果一旦自分が作ったプロセスを、部下全員にしっかりレクチャーを行ってください。
この必要な情報を部下に渡さないでビジョン作りを指示したら、単なる嫌がらせになってしまいます。
必要な情報を貰った上でも、ビジョンとかミッションと言う言葉自体に嫌悪感を示す社員は少なくありませんから
というフレーズに読み替えて議論展開をしてもらう事で、自分事にする事を目指しました。
エンパワーメント化(自律化)を実施していくうえで、このプロセスは重要で、かつ繰り返し繰り返し実施しなければなりません。
ビジョンの共有がしっかりしていれば、エンパワーメント化するための道は正しい方向に歩んでいく事がきっと出来るでしょう。
尚、このプロセスにの際に使用したキーメッセージとして、ダーウィンの
『最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残ることが出来るのは、
変化できる者である。』
というフレーズを使用しましたが、キーメッセージとしては非常に有効に機能し、必要の都度使用する事になっていました。