社員自律化(エンパワーメント化)のキーパーソンはミドルマネジメント
~第3章~
短期的な足元成果と中期的な人財育成の両立
自律的な組織改革を実行する上で、エンパワーメント化を採用し、社員個々の成長を推進していく事は、短期的には足元成果にネガティブに作用してしまう事があります。
なぜなら、エンパワーメント化は、社員個々が責任と権限を自覚して行動する事を目指す訳ですが、エンパワーメント化の進化プロセスの中では、失敗も多く経験することになり、また非効率な行動が展開される可能性もあります。
なぜ失敗や非効率が発生するのかと言えば、社員一人一人が自律的に・責任を持って行動(エンパワーメント化)をするという事は、今まで上司から業務の指示を出されて、出された指示を的確に実行していく事を求められていた社員一人一人にとっては初めての経験です。
社員(またはチームで)が自分たちで「何をすべきなのか?」などをすべて考えて実行していく自律的行動は、まさしく未経験であるがゆえに、本来上司が事前に検討していた①リスクサイド回避方法②プライオリティをつけた選択と集中という重要なプロセスが、慣れるまでは抜け落ちる可能性が高いためです。
これは、エンパワーメント化が定着していく上で、必要なステップ期間と言えますし、必要な知見獲得期間とも言えます。
注意ポイント
この停滞期間にリーダーが焦って指示を出しすぎたり、失敗を強引に修正してしまうと部下達は自律化をあきらめてしまう事になり、エンパワーメント化は失敗に終わります。そして、環境変化に強い組織が完成されないため、厳しい事業環境が継続されていく事になるのです。
しかし、一方で会社や組織に課された足元の成果目標は必ず存在し、職場のリーダーはその呪縛から回避することは困難です。
その結果、エンパワーメント化の推進と足元成果の達成は二律背反の関係にもなりかねません。
最も最悪なシナリオは、エンパワーメント化を開始したが、プロセスの中で、会社も職場リーダーも我慢が出来ずに育成より足元成果のための指示を出していき、一方で環境変化に対応するために足元戦略が構築できていない事で、エンパワーメント化の育成も、足元成果も出せないという崩壊状態を作ってしまう事です。
事実、私の組織でエンパワーメント化を取り組んだ際にも、会社全体での取り組みになっていなかったことから、勝手に組織の設計や育成方向を変更して行動していた私の組織に対しての風当たりは非常に強いものでした。
このような状況でありながら、二律背反である足元成果とエンパワーメント化の両方を取り組み切れた理由は、足元成果を他のどんな組織にも負けない実績を残し続けることが出来たため、その取り組みは正当化されて評価され続けたのです。
エンパワーメント化のステップを踏んでいくためには、現在抱えている業務に付加される教育機会・研修機会の時間が必要になります。したがって並行して足元業務の成果を出していくには仕事の仕方のポイントを絞る必要があります。
ポイント
①行動はすべて、計算できる成果の出る事しか実践してはならない。
②上位組織からの画一的な指示を第一線に流してはいけない。
③成果の大きさに基づいた、行動の優先順位は徹底する。
④リーダーは、やらない事の指示と行動計画書のサポートと行動進捗のサポートに傾注する事。
以上の4ポイントに絞る事を行えば、絶対に足元成果は出していけます、またエンパワーメント化のために必要な時間創出も出来るはずです。なお、この4ポイントの内容については、本ブログ中の別記事に全て記載してありますので、参考にして下さい。
4ポイント詳細はコチラエンパワーメント化は、その目指すべき方向性に共感する方はとても多いと思います。しかし実行に移すためには、数多くの難関を乗り越えていかなければならない事から本格的に実行に移す事例は多くはないと思います。
さて、トップリーダー層の方、職場リーダーの方、ここでもう一度自分の会社、自分の組織について考えてみてください。
だから理想を追求するのを止めますか?
競合や環境に取り残されていく自分の企業・組織を、ただ眺めていきますか?
自分の部下が将来苦しんでいく事を平気でいられますか?